春江病院
春江病院

〒919-0476 福井県坂井市春江町針原65号7番地
当院は人口わずか75万人の福井県の北に位置し、
周囲を田んぼで囲まれた非常にのどかな病院です。
2018年に『関節温存・スポーツ整形外科センター』を立ち上げ、
その2年後には膝関節温存術の代表である
「膝周囲骨切り術」の件数は日本トップクラスを誇るようになりました。*
当院の常勤整形外科医師は関節温存・スポーツ整形外科センター3名、
手の外科センター1名の4名ですが、
年間手術件数は1,500件と北陸有数の数字を誇ります。*
現在では県内外を問わずに、
広い地域から膝関節疾患に悩める患者様が集まるセンターになりました。
また関節温存の限界を超えた方々も同時に増え続け、
昨年には人工関節のロボット手術も導入し、
膝周囲骨切り術・人工膝関節置換術ともに年間約200件を数えるようになりました。
つまり、あくまでも『関節温存』を第一に考えますが、
無理な温存が患者様に不利益だと判断した場合には、
『関節置換』を勧めて説得するのも当院の大きな特徴です。
とにかく当院の最終目標は『関節を温存すること』ではなく、
元気な膝を得て、患者様に幸せな人生を過ごしていただくことに他なりません。
*2023年National data baseより
Q1:「歩行解析計 iMU One」の導入経緯、決め手を教えてください
私共は関節温存・スポーツ整形外科『手術』センターではありません。
「歩けないので歩けるようにしてほしい」と願ってくる患者様に、
本当に手術が必要なのか?を考えるところから始めます。
その考える手段として、
今まで「何となく」こうすれば良くなるのではないか?と
自身の経験から推測していたものを、
客観的かつ簡易的に分析できるツールをずっと探していました。
そこで出会ったものが、「歩行解析計 iMU One」でした。
また膝周囲骨切り術では、設計図を描き、
これだけの矯正を行えばこのように歩いてくれるハズだ、と計画して行うわけですが、
実際にどれだけの膝のブレがどれだけ改善されたのかが分かりません。
そこにも客観的かつ簡易的な分析が不可欠と考え導入を決定しました。
Q2:普段の診療で、どのように取り入れていますか?
診察はまず、患者様がどれほど歩けるのか歩けないのか、
どんな場面で何にお困りかを聞くことから入ります。
口コミや紹介などで来院された患者様で、
その時点で保存加療の限界を超えていると判断した場合には手術を選択し、
術前後の評価項目として歩行解析計 iMU Oneを取り入れます。
まだ症状が軽度でそこまでお困りでない患者様や、
手術を希望してきたものの、まだトライするべき保存加療を十分に試されていない患者様には
リハビリテーションを処方しますが、
その中心となるのが歩行解析計 iMU Oneによる歩行解析に基づいた指導です。
歩行解析計 iMU Oneの測定に加えて全例で歩行の動画を撮影し、
数値と共に歩容も患者様にフィードバックを行います。
さらに歩行解析計 iMU Oneの値に基づき、適切な足底板や筋力訓練、
サポーターなどを提案してフォローしていきます。
とにかく保存加療を行う場合にも、手術を行う場合にも、
『歩く』を『診る』ことは
治療方針の決定や客観的な効果判定において極めて重要だと考えています。
Q3:患者様の反応はいかがですか?
患者様の中には、今までの病院で歩く姿を見てもらったことすらない、
と言われる方も少なからずおられます。
それが『歩く』を『診てもらった』結果が、
客観的な数値や動画によって説明されることによって、
自身の痛みの原因にちゃんと向き合えることで、大きく納得され、喜ばれます。
また、保存加療に最も重要な要素は、患者様のモチベーションに他なりません。
分析が見える化されることによって、
見えたものを改善しようという自主トレーニング継続のモチベーションが向上します。
例えば、これまで漫然と膝に電気を『かけてもらっていた』という受動的な患者様の意識が、
歩容を『改善しよう!』という能動的な意識に変化していきます。
こうした気持ちは術後においても同様で、
同じ手術を行って同じアライメントが得られたとしても、
能動的意識が成績の向上に役立つと信じております。
Q4:導入前後で変化したことはありますか?
具体的な数値は出しておりませんが、
明らかに保存加療で完結できる患者様の割合は増えました。
また理学療法士の皆様も、これまで何となく診ていた歩容を、
しっかりと根拠に基づいて考え、解決法を考えるようになりました。
治療を受ける側と施す側の双方がより科学的かつ能動的に取り組むことで、
成績が向上していると感じます。
Q5:今後、さらにどのように活用していきたいと考えていますか?
現段階ではまだ導入からの日が浅く、
その有効活用を最大限に引き上げようと
トライ・アンド・エラーを繰り返しているところです。
それゆえに私自身の表現が「信じております」「感じます」という
具体性に欠ける状況であると言わざるを得ません。
今後は、手術前後のデータのみならず、保存加療においても、
どのようなデータの患者様に対して
どのようにアプローチした結果がどうだったのかを蓄積していき、
歩行解析計 iMU Oneから得られたデータの
根拠に基づいた治療を確立させていきたいと考えます。